20050518

パートナーに『海辺のカフカ』をお借りして、2週間ぐらいかけて読み終えた。『ノルウェーの森』も『ねじまき鳥クロニクル』も挫折し、最近では食わず嫌いにすらなりつつあった村上春樹を、遂に読み終えてしまった。以外に拒絶反応でなかったなーと思っていたのだが、amazonのカスタマーレビューによると『カフカ』は村上作品の中では読み易い方なんだそうだ。

叙情的で夢想的で、ミステリィ有りアドベンチャー有りの不思議な世界観。著者の自由で透明な感受性から生まれるカオス的なストーリー。多少ソフトにまとめられているものの村上ワールド健在というところか。

作品内で度々語られる 「世界の万物はメタファーだ」 という台詞がまさしく象徴しているように、物語はまるで隠喩を掻き集めて構成されたかのようであり、そしてこの技法が意味不明だけど現実的、という夢の中のような世界を構築する効果を上げている事に気付く。

果たして一連の村上作品はそういったメタファーを用いて何を表現しようとしているのだろうか。

そして著者の目には現行世界はこの様に映っているのだろうか。

積み重ねられたメタファーの垣根の先に、著者なりの真実は隠されているのだろうか。或いは、そもそもそんな事を探ること自体村上作品においてタブーなのか、所詮僕の読解力の及ぶ所ではなかった。

唯ひとつ思うのは、この不思議な世界観を構築せしめている隠喩表現の中に、著者の意図めいた物を感じた瞬間作品の神秘性は失われるという事である。所々にそういった箇所を見つけて違和感を感じずにいられない。


僕が村上ワールドに浸りきれないのはそういう理由がある。



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何と言っていいか難しいですが・・・あざとさを感じてしまうのです。流行ってるのも謎。

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※このエントリーは、旧ウェブサイト内『丁野論』ページに掲載していた文章を、改訂・転載したものです。投稿の公開日は、過去に記事をアップした日に設定しております。

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