20050913

050901_妖怪大戦争
050910_妖怪大戦争2

さあ今回も妖怪大戦争のレビューです。と言うより妖怪を紹介してるだけじゃないかというツッコミは華麗にスルーしてと・・・。

妖怪軍団の敵として日本を壊滅させようとする悪霊軍団、そのボスは何とあの『加藤保憲(かとうやすのり)』です。


↑加藤保憲(豊川悦司) ※画像が悪くてすみません。

荒又宏氏の大傑作『帝都物語』等の悪役としてお馴染み、しかも今回は豊川悦司が演じます。妖怪大戦争の原作も荒又宏なので、自分の作ったキャラを使いまわしたというところでしょうか。因みにかつての加藤保憲はこんな感じ↓


↑嶋田久作演じる『加藤保憲』

随分とカッコ良くなったものです。昔の加藤ファンはトヨエツ加藤に違和感を感じるかもしれません。確かに迫力は嶋田久作に及ばない感は否めませんが、僕はトヨエツも意外に似合ってると思いました。

その魔人・加藤保憲の下で実働部隊として働く、『鳥刺し妖女・アギ(とりさしようじょ・あぎ)』。


↑鳥刺し妖女・アギ(栗山千明)

愛する加藤の為にせっせと働いた挙句最後は裏切られ殺されちゃうという、この映画で一番可愛そうな人。栗山千明の演技力も手伝って、ばっちり感情移入できます。それにしてもさすがハリウッド女優ですね、色気・存在感・加藤に盲従する狂気・そしてアクションとどれをとっても一流の演技。中盤まではこの人ばかり目立ってたような気がします。

続いて妖怪達のリーダーというかまとめ役である、『ぬらりひょん』。


↑ぬらりひょん(忌野清志朗)

アニメ版「ゲゲゲの鬼太郎」では敵の総大将として役所を得ていたぬらりひょんですが、本来何の悪戯をする事も無い飄々とした妖怪。忌野清志朗はハマリ役でした。

では次々に紹介しますよ、『油すまし(あぶらすまし)』、『豆腐小僧(とうふこぞう)』、『一本だたら(いっぽんだたら)』、『雪女(ゆきおんな)』、そして『大首(おおくび)』です。


↑油すまし(竹中直人)


↑豆腐小僧(蛍原徹)


↑一本だたら(田口浩正)


↑雪女(吉井怜)


↑大首(石橋蓮司)


さて皆さん、そろそろ気付いてるとは思いますがこの映画、キャストが豪華過ぎです。石橋蓮司なんか一瞬しか映らなかったうえに、特殊メイクで本人かどうか分かりません。ホントに、俳優のギャラだけで幾ら掛かってるのか、それとも皆友情出演なんでしょうか。


では最後に、主人公タダシに懐く『すねこすり』です。


↑すねこすり

トトロで言えばまっくろくろすけに当たる、本作のマスコットキャラクター的存在。「すねこすり携帯ストラップ」等の記念グッズも販売され、角川映画の全面プッシュを一身に受けます。ただ・・・


可愛くないだろ。


いやいやいやいや、これが不思議な事にストーリーの進行に連れて段々可愛く思えてくるのです。これで子供や女性の人気もバッチリ、この不気味な容姿も計算ずくだったのかと思うと美術班のセンスに驚愕を憶えますね。ところがこのすねこすり、最後には壮絶な運命が待ち受けているのです。


敵に捕らえられ、悪霊に姿を変えられ、最後は主人公に泣く泣く斬り捨てられる。


なんと一番の友達を主人公本人に始末させるという超過激な顛末。子供と女性の支持を一気に失いました。さすが角川映画、そしてプロジェクトチーム「怪」、お上品な夏休み映画で終わらせる気は毛頭ありません。「きゅううう」と泣きながら息を引き取るすねこすりの前に泣き崩れながら、怨敵加藤への復讐を誓う主人公タダシくん。これが大人への階段だと言うなら正直辛過ぎます。

純情な少年にとってトラウマになりかねない試練を乗り越え、見事復讐を果たした少年は、年月を経て大人になり、そして子供の頃の妖怪たちを見ることの出来た感覚を忘れてしまいます。大人になったタダシくんに必死ですがりつくすねこすり(何故か生きていた)。しかしその姿はもはやタダシくんには見えません。平気でゴミを捨ててしまうタダシくんを陰から見つめ、不気味にほくそえむ魔人・加藤保憲。


何とシュールなエンディングか。


恐らく人間のエゴや自然破壊に対して警鐘を鳴らすテーマがあるのでしょうが、もののけ姫よりよほど辛口です。思えば『ゲゲゲの鬼太郎』のラストには「悪いのはいつも人間、被害者はいつも妖怪」というメッセージが込められていたのですが、本作も思いっきり水木しげるイズムに染まってます。


。。。とまあ、妖怪大戦争レビューでした。全3回に渡ってお送りした今回のレビュー、そして閲覧者のニーズを全く無視した妖怪祭りも終了です。妖怪大戦争は続編を匂わせる終わり方だったので、また次回作を心待ちにしながら、希望の無い人間社会を生きていきましょう皆さん!



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☆※※※☆ <採点不能
島田久作版加藤保憲のでてくる映画『帝都物語』。内容は忘れてしまいましたが、彼が怖かった事だけは覚えてます。

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★★★☆☆
小説版。こちらはとても面白い!おすすめです。


※このエントリーは、旧ウェブサイト内『丁野論』ページに掲載していた文章を、改訂・転載したものです。投稿の公開日は、過去に記事をアップした日に設定しております。

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