20120214

モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか
ダニエル・ピンク
講談社
売り上げランキング: 884
★★★☆☆

少し前に日本でも話題になった本で、すでに読んだ人も多いと思います。

著者、ダニエル・ピンク氏は、アル・ゴア副大統領の主席スピーチライターを務めていた人物です。(現在はフリーエージェント)本書の他にも、ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代や、フリーエージェント社会の到来―「雇われない生き方」は何を変えるかなどの著書があり、いずれもベストセラーになっています。

僕は、彼の著書を読むのはこれが初めてですが、その高評価はよく耳にしていました。実際読んでみると、噂にたがわぬ非常に良い内容で、自信を持って人に薦められる本でした。だからこそ残念なのは、この安っぽいタイトルと装丁デザイン!うそ臭い自己啓発書と誤解され、認知度を下げる悪因となっている気がしてなりません。

〈モチベーション3・0〉とは何か?
コンピューター同様、社会にも人を動かすための基本ソフト(OS)がある。
〈モチベーション1・0〉…生存(サバイバル)を目的としていた人類最初のOS 。
〈モチベーション2・0〉…アメとムチ=信賞必罰に基づく与えられた動機づけによるOS。ルーチンワーク中心の時代には有効だったが、21世紀を迎えて機能不全に陥る。
〈モチベーション3・0〉…自分の内面から湧き出る「やる気!=ドライブ!」に基づくOS。活気ある社会や組織をつくるための新しい「やる気!」の基本形。

amazon『内容紹介』より抜粋

本書の指摘する、「アメとムチによる動機づけ<モチベーション2.0>に基づいて人を働かせることは、成果を達成するという目的に対して正反対の作用を及ぼす。」という主張は、すぐには信じがたい理想主義のような気もします。僕たちは給料がもらえるからやる気がわいてくるもので、クビになりたくないから辛い仕事もがんばるのだと、自分たちのことを考えています。何より世の中の多くの仕事、会社は、こうした成果主義に基づいて運営されており、これだけ世界中に普及したシステムに欠陥があるなんて、ちょっと考えられない眉唾の理論だと思うかもしれません。

しかし本書は、相当量の実験データを元にそうした意見を否定します。例えば次のような実験です。

被験者をA、Bの2グループに分け、全員に同じ、パズル解読のような“問題”を与える。
Aグループには、パズルが解けたら報酬を与える。
Bグループには、パズルが解けても報酬も何も与えない。

このような状況で、まずは両グループがパズルに取り組む様子に、大きな違いはありません。パズル解読の途中に、“自由なことをしてよい”休憩時間を設けても、その間もパズルで遊ぶといった行動も、両グループに共通して見られます。

しかし例えば2日目、Aグループに対して「報酬がなくなったので、今日はパズルを解いても何もあげられない。」と伝えます。すると途端にAグループはパズルに対する興味を失い、作業効率は格段に下がるのだそうです。休憩時間にパズルをする時間も大幅に減ります。

一方、もともと報酬がもらえないBグループは2日目には、初日よりもさらに熱心にパズルを楽しみ、休憩時間中に“問題”に取り組む時間ももう少し長くなったのだそうです。

こういった実験結果が示すのは、「報酬をエサに人を働かせる成果主義は、短期的には人のモチベーションを上げることはできても、長期的には“仕事”そのものへの興味を失わせる、非効率的な方法である。」という理論です。

なるほど、これはとてもよく理解できます。報酬を与えることを約束したAグループにとって、パズル解読という“問題”は義務的な“仕事”になってしまい、報酬がなくなった途端モチベーションも失われてしまったのです。最初から報酬を求めていないBグループは、パズルを解く“楽しみ”そのものが目的になり、“遊び”としてモチベーションを持続できたのでしょう。

お小遣いをエサに子供に勉強させても、その子がどんどん勉強嫌いになっていく、といった体験などは、身に覚えのある人も多いのではないでしょうか。

次回は、本書の指摘する「クリエイティブな業務において、成果主義は効率性を低下させる」という内容を、読み解いてみたいと思います。



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ダニエル・ピンク
講談社
売り上げランキング: 884
★★★☆☆
こうした英語を日本語に訳した本は、言い回しがまわりくどいのがちょっと気になります。訳者に責任はないのですが・・・。



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