20040517

中学高校時代、志賀直哉に嵌(はま)った時期があった。

他の白樺派には目もくれず、ただ彼にだけ魅かれた。武者小路実篤なんかも読んだけれど僕の中で、志賀直哉と同じく分類できるものではないと感じていたからだ。
きっかけは教科書に載っていた『城之崎にて』を読んで、衝撃を受けたからである。
その簡潔な文章がとても潔いと思えた。
その後図書室で志賀直哉を片っ端から借りてきて読み漁った。

しかし『網走まで』『暗夜行路』はそれほど面白くなかったような気がした。今ではどんな話かも思い出せないほどだ。
志賀直哉の作品の中で僕を惹きつけたのは、どちらかと言うと代表作には挙げられ難い、『小僧の神様』、『清兵衛と瓢箪』、そして『城之崎にて』である。


・・・ぢみ。


・・・ぢみだな。改めて考えると。


これらの地味な作品がたまらなく面白く、何度も借りなおし細部まで読み込んだ。

自分は書評なんて大それたものは難しくて書けないから、志賀直哉を好きな理由をだらだらと羅列して単なる自己満足の私見ページにしてしまうことに決定する。
以下、内容に触れている部分もあるので知りたくない人は逃げ出してください。


『小僧の神様』

いい話だ、とか可愛そうな、とか簡単な言葉で説明できないストーリー。
この曖昧さ、中途半端さがたまらない。文章の簡潔さと相まって童話のような神聖さすら感じる。

そして何が素晴らしいって、作者自身が物語終了後にもうひとつのバッドエンドとも言うべきパターンを書いちゃってる事だ。
その結末は残酷すぎて使うことが出来なかったと自ら述べている。
ありえないとも思ったが、これがまた絶妙の効果をもたらしていることに気づく。

読み終えたとき物語の結びのうまさに、興奮と爽快感を覚え、作者がこれを意図的にやっているとしたら神に近い真理を悟っているんじゃないか、とまで思ったほどである。

ちょっと興奮して誉め過ぎたけどそれぐらいビックリしたんです、当時は。



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僕の好きな『小僧の神様』と『城之崎にて』、2本とも収録されています。


※このエントリーは、旧ウェブサイト内『丁野論』ページに掲載していた文章を、改訂・転載したものです。投稿の公開日は、過去に記事をアップした日に設定しております。

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