20110820

110729_囚人のジレンマ

本日は、前回の記事で解説した「囚人のジレンマ」を身近なケースモデルに置き換え、イメージしやすい形で考察してみたいと思います。タイトルはずばり、「ダンサーのジレンマ」です。


「ダンサーのジレンマ」

あるところに、ちょーの先生ふくだ先生というダンス教師がいました。2人ともA級で、レッスン代は500円でした。そして2人にはつちや先生という、とても優しい先輩がいました。



ある日、先輩であるつちや先生から「晩ゴハンを買ってこい」との命令を受けました。いわゆるパシリです。

つちや先生はグルメなので、高級食材を使ったフルコースの接待でなければ満足しません。2人は自分のレッスンをキャンセルして、共働で買出しに行けばディナーメニューをそろえる事ができ、優しいつちや先生から「ありがとう」の言葉をもらうことができます。(利得0円/0円)



どちらか1人が裏切って、お客さまのレッスンをすれば、レッスン代として500円の収入を得ることができます。しかしもう1人はつちや先生のディナーをそろえる事ができず、1,000円をカツアゲされてしまいます。(利得500円/-1,000円)



さらに、2人ともパシリに行かず自分のお客さまをレッスンしてしまうと、晩ゴハンが食べられないつちや先生は大怒り!2人は2,000円をカツアゲされてしまいます。レッスン代として500円を得ますが1人当たり1,000円カツアゲされてしまうので、結果的には2人とも-500円となってしまいます。(利得-500円/-500円)



さて、2人のダンサーはどうすればいいのでしょう?




<考察>

言うまでもありませんが、このストーリーはあくまでも思考実験としてのフィクションであり、実在の人物、先輩、その性格などとは一切関係ありません。また、「ケータリングでごまかす」とか「オーナーに密告する」などの解は考えないものとします。同様にちょーの先生ふくだ先生は事前に相談することはできず、相手が一緒にパシリに行ってくれるか、自分を裏切るかは、わからないものとします。

それでは結論を述べましょう。ずばり、「2人ともレッスンをして、-500円の利得を得る」が解となります!

ちょーの先生の戦略を考えてみましょう。


  • ふくだ先生がパシリに行った場合》 一緒にパシリに行くと0円。相手を裏切り、自分だけレッスンをすると+500円。

    →レッスンしたほうが得。


  • ふくだ先生がレッスンをした場合》 パシリに行くと-1,000円。自分もレッスンをすると-500円。

    →レッスンしたほうが得。

このように、ふくだ先生がどちらを選ぼうとも、ちょーの先生は裏切ってレッスンした方が得である、という計算が導き出されます。そして同様のロジックがふくだ先生の意思決定にも適用されるため、やはりふくだ先生もレッスンをする戦略を選択します。



「2人でパシリに行く(0円、0円)」のが、2人にとって一番良いのは明らかです。にもかかわらず、「2人ともレッスンをする(-500円、-500円)」という、2人にとって最悪の結果を招いてしまうのです。一人一人はちゃんと損得を計算し、合理的に意思決定をおこなっているので、たとえ全体が不幸になることがわかっていても、戦略を変更することはできないのです。

現実社会でも「値下げ競争」などに、こうした問題が現われています。しない方が良いことはわかっていても、ライバル社にシェアを独占されるリスクに耐えられず、値を下げ続け業界全体の利益を圧迫してしまうのです。

何とも恐ろしい話ですが、こうした矛盾は日々、身近なところで起こっている、きわめて日常的、根源的な問題なのです。



※このエントリーは、ダンスblog『Happy Dancing』に掲載していた文章を、改訂・転載したものです。投稿の公開日は、過去に記事をアップした日に設定しております。

0 コメント:

コメントを投稿

 
Toggle Footer