先月に引き続き、『もし現役プロの競技ダンサーが『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』を読んだら』
略して『もしもしドラ』の第2章をお送りしたいと思います。
※『もしドラ』を未読で今後楽しみにしている方は、この先の文章は読まないで下さい。内容に触れる個所がたくさん出てきます。
前回までのあらすじ・・・
野球部のマネージャーの川島みなみは、偶然、ドラッカーの『マネジメント』に出会います。最初は難しくてめげそうになりますが、次第に野球部を強くするのに役立つことに気づきます。・・・という本に、偶然出会った現役競技ダンサーの丁野しんいちは、最初は難しくてめげそうになりますが、次第に競技ダンスカップルを強くするのに役立つことに気づきます。本の通りマネジメントに取り組んだちょーのは、競技ダンスカップルは感動を与えるための組織であると、定義づけしました。
・・・あらすじ終わり
第2章 ちょーのはマーケティングに取り組んだ
組織の定義づけに続いて『もしドラ』の主人公が取り組んだのは、マーケティングです。このマーケティングとは、組織を運営する上でとても重要なものなのだそうです。ドラッカーの『マネジメント』には以下のように記述されています。
真のマーケティングは顧客からスタートする。すなわち現実、欲求、価値からスタートする。「われわれは何を売りたいか」ではなく、「顧客は何を買いたいか」を問う。「われわれの製品やサービスにできることはこれである」ではなく、「顧客が価値ありとし、必要とし、求めている満足はこれである」と言う。(『【エッセンシャル版】マネジメント』 17頁)前回の記事でも触れた「顧客からスタートする」という文言ですね。顧客が求めているものを満たしてやることが組織の存在意義であり、何を求めているのか知ることがマーケティングとなるわけです。
しかしこれは、とても難しい問題です。僕たちダンサーは、顧客から何を求められているのか。前回の定義づけにより、ダンスカップルは「感動を与えるための組織」となったわけですが、ではどういうダンスをすれば感動を与えられるのか。この疑問に対して、はっきりとした答えが無いのです。
例えば、驚異的なスピードでアクロバティックな技を見せるダンサーに、感動を覚える人もいるでしょう。一方で、男と女のドラマティックな表現に涙を流す人もいるでしょう。近年問題視されている、「ダンスはスポーツか芸術か」というテーマですが、この一つをとっても僕たちダンサーはどちらを選ぶべきか迷ってしまいます。人それぞれで感動するポイントが違う以上、「すべての顧客の声を聞く」というのは不可能なのではないでしょうか?
その答えは、前回の記事内でも述べた「顧客はだれか?」という問いの中にありました。『もしドラ』の主人公は、野球部の顧客を以下のように定義づけていたのです。
「顧客は誰か?」→お金を出してくれる親、部費や施設を提供してくれる学校や応援してくれる生徒、東京都、高野連、試合を見てくれる全国の高校野球ファン、そして実際にプレーをする野球部員。そして主人公はなんと、まず最初に野球部員に対してマーケティングを開始したのです!
まったくの盲点でした。名前に対する先入観から「顧客=観客」だと勝手に思い込んでいましたが、よくよく考えてみれば自分自身も顧客に含むのですから、これは当然のことです。
自分のダンスを見に来てくれるお客さまが、どういうダンスを求めているのか、その声に耳を傾けることはもちろん重要です。しかしそれだけでは、単なるアンケートであり真のマーケティングとは言えません。『もしドラ』の主人公が、まず部員に対して「何を求めているのか」リサーチしたように、僕たちダンサーも、「自分はどういうダンスを踊りたいのか」、そして「自分はどういうダンスに感動するのか」を、突き詰めて考える必要があるのだと、痛感したのでした。
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応用編としてこちらを読みました。『マネジメント』だけでは解決できない問題について、知ることができます。
※このエントリーは、ダンスblog『Happy Dancing』に掲載していた文章を、改訂・転載したものです。投稿の公開日は、過去に記事をアップした日に設定しております。
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