20101222

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら
岩崎 夏海
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 80
★★★☆☆

上記の本をご存知でしょうか。現代経営学の祖ピーター・ドラッカーの著書『マネジメント』の解説・実践法を、分かりやすく物語に仕立てたビジネス小説です。

発売から6カ月で100万部を突破、2010年の書籍部門総合ランキング1位を獲得するなど、大ベストセラーとなりました。この本を機にドラッカー本人もブームとなり、経営学を再び見直す社会現象が起こりました。タイトルの略称『もしドラ』は流行語大賞にもノミネートされ、今後の漫画化、アニメ化、映画化が決定したモンスターヒットです。僕が紹介するまでもなく、知ってる人、すでに読んだ人も多いと思います。

この話題作を、今更ながら僕も読んでみました。という訳で、このコラムのタイトルはずばり、


『もし現役プロの競技ダンサーが『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』を読んだら』

略して『もしもしドラ』です!


・・・単に、これが言ってみたかったのではありません。

この本を読めば、ドラッカーの『マネジメント』が企業などの営利組織だけでなく、高校野球部のような身近で小規模な非営利団体にも、十分適用可能である事がわかります。そして僕たち社交ダンサーの、最も身近で実感しやすい組織といえば、ずばりダンスのカップルではないでしょうか。そう、カップルとは、2人という最小単位で構成された組織・団体だからです。

※『もしドラ』を未読で今後楽しみにしている方は、この先の文章は読まないで下さい。内容に触れる個所がたくさん出てきます。

さっそく、『もしドラ』の中で行われたように、ダンスカップルをマネジメントしてみましょう。


その1、組織の定義づけ

ドラッカーの『マネジメント』には以下のように書かれています。


  • あらゆる組織において(中略)努力を実現するためには「われわれの事業は何か。何であるべきか」を定義することが不可欠である。


  • 「顧客は誰か」という問いこそ、個々の企業の使命を定義するうえで、最も重要な問いである。


これに対し、『もしドラ』の主人公である女子マネージャーは、以下のように答えを出します。


  • 「顧客は誰か?」→お金を出してくれる親、部費や施設を提供してくれる学校や応援してくれる生徒、東京都、高野連、試合を見てくれる全国の高校野球ファン、そして実際にプレーをする野球部員。


  • 「野球部は何のための組織か?」→上記の顧客に対し、感動を与えるための組織。


これはほぼ同じ内容が、ダンスカップルにも応用できるように思われます。つまり、


  • 「顧客は誰か?」→お金を出して見にきてくれる観客、競技会を運営する主催者、ジャッジ、試合結果を気にしているダンスファン、そして実際に踊る競技選手。


  • 「競技ダンスカップルは何のための組織か?」→上記の顧客に対し、感動を与えるための組織。


ちなみに、ここでは競技ダンスカップルについて述べますので、レッスン教師としての側面は省きます。高校野球部と同じく、僕たちダンスカップルもまた「感動」を与えるための組織、と言えるのではないでしょうか。

ここで注意したいのは、競技ダンサーは「勝つこと」が最終目標であり、カップルは「勝つための組織」であると思いがちですが、それは間違いだということです。

『もしドラ』の中で、高校野球部がただの「野球をするための組織」でなかったように、僕たちも「ダンスをして勝つための組織」ではありません。顧客の求めるもの、つまり「感動」を与えるための組織です。

そしてこれは誤解されがちですが、だからといって「勝つこと」をおろそかにするのでも、ありません。「感動」を与えるために、「勝つ」ための努力は絶対に必要です。ただそれが目的そのものになってしまい、「勝てれば何をやっても良い」という考えになってはいけない、ということです。

「感動を与える」のが目的、「勝つこと」はそのための手段。この順序を忘れたダンサーは、どれだけ成績を上げても応援されなくなるのではないでしょうか。耳の痛い言葉ですが、これはぜひとも肝に銘じておかねばなりません。でなければ、僕たちの努力と顧客の求めるものに、ずれが生じてしまうからです。

これこそ『もしドラ』の中で繰り返し説かれている、「顧客からスタートする」ということではないでしょうか。

真のマーケティングは顧客からスタートする。すなわち現実、欲求、価値からスタートする。「われわれは何を売りたいか」ではなく、「顧客は何を買いたいか」を問う。(『もしドラ』 59頁)

>もしもしドラ2につづく



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岩崎 夏海
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 80
★★★☆☆
内容はともかく、この秀逸なタイトルに★3つを捧げたいと思います。


※このエントリーは、ダンスblog『Happy Dancing』に掲載していた文章を、改訂・転載したものです。投稿の公開日は、過去に記事をアップした日に設定しております。

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