071017_テレビジョン2
「僕が親切な人間か?命を与えてそれをまた奪うのが?」
- 『レナードの朝』 Dr.セイヤーの台詞より -
再び続きです。
奇跡のカムバックを果たした我が家のテレビは、何事も無かったかのように鮮明な画像を提供してくれていました。寧ろ日に日に鮮やかになっていくその様は、失った2年間を取り戻そうと1分1秒を精一杯生きているようで、観ている僕の心を打ちました。僕もまたその気持ちに応えようと、画面に見入ってしまうのでした。そしてその画面から流れてくる映像に、驚かされっ放しでした。
「あのCMはこんな映像だったのか」
「このタレント、髪を切ってたのか」
「『でもそんなの関係ない』の人って、海パンだったのか」
今まで音声だけしか聞けず知り得なかった数々の情報が、怒涛の様に押し寄せて来ます。毎日が新鮮な感動、新しい発見の連続でした。テレビが観れるって、こんなに素晴らしい事だったんだ!
思えばこの時既に、不安な気持ちは確かにあったのです。
幸せな日々がいつか終わるのではという根拠の無い曇った予感。日に日に鮮やかさを増す画面に、燃え尽きる間際に最も輝く線香花火のような生き様を見て取りました。次第に巨大化していく不安を振り払うかのように、帰宅後すぐにテレビのスイッチを入れ、何時までも映像に見入る日々。或いは何時か来る別れを知っていたからこそ、今を生きる事に全力だったのかもしれません。
そして別れは突然にやって来ました。

その目覚めが突然だったように、再び眠りにつくのもまた、突然でした。何の前触れもなく、ある日、突然に。
そして僕もまた、何事も無かったかのように音声だけを聞く日々に逆戻りです。神様のくれた奇跡の10日間のことを想いながら。そしてかつて観た『レナードの朝』という映画のある台詞について、思い巡らせながら・・・。
「眠っていたのはどっちだ?」
- 『レナードの朝』 レナード・ロウの台詞より -
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傑作です。言葉にしようがないほどの。
※このエントリーは、旧ウェブサイト内『丁野論』ページに掲載していた文章を、改訂・転載したものです。投稿の公開日は、過去に記事をアップした日に設定しております。
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